2021年3月1日月曜日

ブラヴァツキー夫人とオウムをくっつけるT・O氏 ⑤ T・O氏はオウム真理教の御用作家なのか?

※ブラヴァツキー夫人に関する大田俊寛氏の論考に疑問を抱き、ココログブログ「マダムNの覚書」にノートしているところである。

いずれノートをまとめたエッセーにして、はてなブログ「マダムNの神秘主義的エッセー」に収録する予定。

関連記事は前掲はてなブログのエッセー26「ブラヴァツキー夫人の神智学を誹謗中傷する人々 ①ブラヴァツキー夫人とオウムをくっつける人」である。

作業をやりやすくするため、「マダムNの覚書」のノートを当ブログにピックアップしておく。

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2020年8月20日 (木)
大田俊寛氏はオウム真理教の御用作家なのか?
https://elder.tea-nifty.com/blog/2020/08/post-9fcec2.html

大田俊寛『現代オカルトの根源――霊性進化論』(筑摩書房、2013)は、13日の記事に書いたように、タイトルからしてわたしには意味不明である。霊性進化論なんて、意味がわからない。霊性が進化する?

大田氏は言葉の定義もせずに、話を進めていく。ブラヴァツキー夫人の細心の注意が払われた膨大な数の言葉の定義を見よ。これができて初めて、あれほどの引用、照らし合わせができるのだ。でなければ、ブラヴァツキー夫人の代表作『The Secret Doctrine: The Synthesis of Science, Religion and Philosophy』は単なる断片集になってしまったことだろう。

ブラヴァツキー夫人について書かれた章の内容の貧弱さからすれば、おそらく大田氏の頭の中には曖昧模糊とした霊肉二元論が存在しているだけである。極めて短絡的な思考回路が、大田氏は麻原氏と似ているように思える。

その短絡的な思考回路から出てきた大田氏的「霊」「霊性」という単語であり、「霊性進化論」という造語であるのだが、彼はそこから勝手に妄想を膨らませて、ブラヴァツキー夫人が「進化論と心霊主義の構想を巧みに融合させた」などと、嘘八百書いている。

そもそもブラヴァツキー夫人が「霊」をどのような意味で使ったのか、大田氏は全くわかっていない。

『現代オカルトの根源――霊性進化論』の主要参考資料一覧に挙げられているブラヴァツキー夫人の著作は、H・P・ブラヴァツキー(田中恵美子&ジェフ・クラーク訳)『シークレット・ドクトリン 宇宙発生論(上)』(神智学協会ニッポン・ロッジ、1989)と、『シークレット・ドクトリン』原書の第2巻 Anthropogenesis(人類発生論) の2冊だけである。

わたしが持っているジルコフ編『シークレット・ドクトリン 第 1 巻』本文の最初に「霊」という言葉が出てくる文章を探してみた。

Spirit is the first differentiation from THAT,the causeless cause of both Spirit and Matter.

Helena Petrovna Blavatsky. The Secret Doctrine: Collected Writings 1888 : Cosmogenesis. Boris De Zirkoff , ed. Quest Books, 1993, p.35

この文章を含む、壮麗な本文最初の段落を、田中恵美子氏、ジェフ・クラーク氏の名訳で紹介したい。それで、興味が湧いたかたはブラヴァツキー夫人と大田氏の著作を読み比べていただきたい。そうすれば、ブラヴァツキー夫人の著作が別格であることがわかるだろう。

       スタンザ 1

      宇 宙 の 夜

1. 永遠の親(空間)は常に目に見えぬ彼女の衣に包まれ、七つの永遠の間、再び深い眠りにおちていた。

“親空間”は永遠で常に存在し、あらゆるものの原因である。つまり、理解できない神性であり、その“目に見えない衣”はあらゆる物質の根であり宇宙の神秘的な根でもある。空間とは私達には最も容易に想像できる永遠なものであって、それは抽象的なものとして不動であり、客観的宇宙が空間の中にあってもなくても、左右されることのないものである。空間はあらゆる意味で次元がなく、自存するものである。霊は、霊と物質両方の原因なき原因であるそれから最初に分化したものである。秘教問答に教えられているように、空間とは無限の空虚でもないし、条件づきの充満でもなく、その両方である。空間は存在して来たし、これからもいつもあるであろう。

H・P・ブラヴァツキー. シークレット・ドクトリン 宇宙発生論(上). 田中恵美子, ジェフ・クラーク訳. 神智学協会ニッポン・ロッジ, 1989, p.239.

第3巻 Index で、英語で「霊」に当たる Spirit を見ると、様々な使いかたがされているようでありながら厳然とした意味があるようで、神智学のイロハもわかっていなかったころのわたしは Soul との区別もつかず、混乱した。

しかし、ありがたいことに、神智学の入門書といってよいH・P・ブラヴァツキー(田中恵美子訳)『神智学の鍵』(神智学協会ニッポン・ロッジ、1995)の用語解説に日本ロッジの挿入文があり、ブラヴァツキーの著作では Spirit がどのような意味で使われるかの解説がある。異なる六つの意味が挙げられていて、各々わかりやすい解説が施されている。

東大の博士課程を終了して埼玉大学非常勤講師を勤める人物のものとは思えない雑な内容の大田氏の著作は、インビュー記事も同じことなので、彼の短絡思考がわかりやすいインタビュー記事を引用する。

ブラヴァツキーは、人類の中には「神人」に進化しうる種子が含まれている一方、霊性の次元から目を背けて「動物化」する人間もいる、という二元論を立てたのですね。私はこうした考え方を「霊性進化論」と呼んでいます。

本多カツヒロ(フリーライター). “なぜ人間はオカルトにハマってしまうのか?: 『現代オカルトの根源』の著者、大田俊寛氏に聞く”. 東洋経済オンライン. 2013-08-23. https://toyokeizai.net/articles/-/18156, (参照 2020-08-19).
大田氏自身が「私はこうした考え方を『霊性進化論』と呼んでいます」と述べていることからもわかるが、前述したように「霊性進化論」というのは大田氏の造語である。この進化街道を驀進する霊性の「霊」とは、どのような意味の「霊」なのか。その「霊」の性質ばかりがひたすら進化するということなのか?

「霊」の定義すらせずに、漠然とした意味の「霊」を、単純な唯物論者ダーウィンの進化論にくっつけている。「こうした考え方」もブラヴァツキー夫人のものではなく、大田氏の自説であるにすぎない。

ブラヴァツキー夫人は、『神智学の鍵』(田中恵美子訳、神智学協会ニッポン・ロッジ、1995)で次のように述べている。

神智学の教えは霊と物質の同一性を主張し、霊は潜在的な物質であり、物質は結晶した霊にすぎないと言います。例えば、氷は固体化した水蒸気であるようにです。しかし、万物の大本で永遠の状態は霊ではなく、いわば超霊(目に見える形体のある物質はその周期的な現れにしかすぎない)なので、私達は霊という言葉は「まことの個性」に適用することができるだけだと主張します。(ブラヴァツキー,田中訳,1995,p.42)
ブラヴァツキー夫人のこの説は一元論だろうか、二元論だろうか。論点によって、それは変わってくる。一元論か二元論かといった、哲学におけるこのような解釈手段自体がもはや古いといえる。

前掲引用に出てくる神智学用語としての「個性(Individuality)」の意味を知るには、まず「人間を含めて宇宙のあらゆる生命、また宇宙そのものも『七本質』という七つの要素からなっている」(H・P・ブラヴァツキー. 実践的オカルティズム. 田中恵美子, ジェフ・クラーク訳. 神智学協会ニッポン・ロッジ , 1995, 用語解説「本質(Principle)」p.23.)ことを理解しなければならない。

ブラヴァツキー夫人の説が如何に複雑であるかは、引用した文章からも、その一端が窺えよう。しかしながら、哲学はこのように複雑であるのが普通だから、大田氏が披露する二元論は幼稚すぎて衝撃的であった。

神獣二元論ともいうべき珍説と共に考え出され、名付けられた「霊性進化論」は、大田氏によって考え出された――おそらく、麻原氏の思想に合わせて考え出されたのだろうが――説であることを押さえておきたい。

大田氏へのインタビュー記事から引用を続ける。
麻原の世界観では、人類全体が2つの種類に大別されていました。ひとつは、自らの霊性のレベルを高め、超人類や神仙民族と呼ばれる存在に進化する「神的人間」であり、もうひとつが、物質的欲望におぼれ動物化していく「動物的人間」です。麻原の見解によれば、現在の世界は「動物的人間」がマジョリティを占めており、他方、「神的人間」はマイノリティとして虐げられている。この構図を転覆しようというのが、「種の入れ替え」という言葉が意味していたものです。

オウムは、数々の修行やイニシエーションによって、「神的人間」を創出・育成しようとした。その一方で、人類の霊性進化の妨げとなる「動物的人間」を粛清しようと、70トンという膨大な量のサリン生産計画に着手したわけです。現在の日本をサリンで壊滅させた後、「シャンバラ」や「真理国」と呼ばれるユートピア国家を樹立しようというのが、オウムの最終目的でした。このように、オウムの世界観においても、「神への進化」と「動物への退化」という霊性進化論的な二元論が、極めて根幹的な役割を果たしていたのです。


本多カツヒロ(フリーライター). “なぜ人間はオカルトにハマってしまうのか?: 『現代オカルトの根源』の著者、大田俊寛氏に聞く”. 東洋経済オンライン. 2013-08-23. https://toyokeizai.net/articles/-/18156, (参照2020-08-19).
『現代オカルトの根源――霊性進化論』で、ブラヴァツキー夫人の著作内容の複雑で重厚な内容を、似ても似つかない間違いだらけの短い要約で済ませてしまって平気な大田氏とは、一体何者なのか?

大田氏の国語力に問題があることは間違いないが、果たしてそれだけの問題なのか?

前にも同じことを書いたような気がして探すと、果たして、そのとき、わたしは大田氏の著作はあまり読んでいなかったはずだが、「オウム真理教事件の犯人は『思想』だった」という記事を、ウィキペディア記述のソースを探して読んだらしい。

※この記事は正しくは、「オウム真理教事件の真の犯人は『思想』だった」というタイトルのエッセー。
大田俊寛. “オウム真理教事件の真の犯人は「思想」だった”. シノドス. 2014-05-15. http://synodos.jp/society/8575, (参照 2020-08-20).
わたしははてなブログ「マダムNの神秘主義的エッセー」の中のエッセー 26「ブラヴァツキー夫人の神智学を誹謗中傷する人々 ①ブラヴァツキー夫人とオウムをくっつける人」で次のように書いている。
孫引きで構成されたいい加減な記事しか書けない癖に、なぜかある程度の知名度があって、自身の主張を広く世間に発信する力を持っている――このような人物こそが思想的な混乱を招く大きな一因となっているとわたしは思うのだが、そんなことは夢にも思わないのだろうか。
わたしは、オウム真理教事件の真の犯人は「国語力の不足」だったと考えている。だから、閲覧者が少ないにも拘わらず、拙ブログ『マダムNの覚書』で文学について、読書について書いてきた。
……(略)……
オウム真理教が反日テロ組織であったことは明白で、中共のような思想弾圧している一党独裁国家ではない、憲法第20条で信教の自由を規定した日本国において彼らは反日テロを起こすという重大な思想的問題を孕んでいたわけだが、そのことを問題視しないのはどういうわけだろうか。
大田氏がわたしの目にオウム真理教(及びその分派団体)の御用作家と映るのは、彼が麻原氏の思想を自説で補填しているからである。

その補填のための自説を以ても庇いきれない異常性が麻原氏の思想には存在するためか、ブラヴァツキー夫人の名を借りて神智学に麻原氏の一切の罪を負わせようとした。何て卑劣な行為であることか。

わたしはノートで、文部科学省の教科書調査官として歴史教科書の検定に関与していた北朝鮮のスパイXがオウム事件にも関与し、日本転覆を図ったことがあるというニュース記事を紹介した。

このようなニュース記事を読むと、大田俊寛氏が純粋に学者としてオウム真理教に関する研究を行ってきたのか、疑わしくなってくる。

大田氏は吉永進一氏同様、オウム真理教の反日性には目もくれず、ブラヴァツキー夫人を煙幕のように悪用して「霊性進化論」という自説に拘泥し、オウム真理教に寄り添う。

北朝鮮のスパイがオウム事件に関与し、国家転覆を図ったことがあるというのであれば、オウム真理教には強い反日性があり、それこそがオウム真理教に内在する第一義的な「思想」であったはずである。つまりオウム真理教事件の真の犯人は反日思想だったということである。

オウム真理教の継続団体「ひかりの輪」ホームページ、広報部のお知らせに「宗教学者2名(鎌田東二氏・大田俊寛氏)の方がひかりの輪の健全性を認める報告:長年の広範な調査研究の結果(2018年04月18日)」という記事がある。

両氏の略歴と論文が紹介されている記事で、大田氏については次のように紹介されている。
新進気鋭の宗教学者であり、近年出色のオウム真理教研究とされる「オウム真理教の精神史」の著者。ひかりの輪に関しても、その教材・資料のほとんどを精査するなど、その広範な調査・研究は他の追随を許さない。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程を修了。グノーシス主義の研究でも著名。

大田博士は、2014年、ひかりの輪の外部監査委員会(当時の委員長は河野義行氏・元長野公安委員・松本サリン事件被害者遺族)の要請を受けて、それまでの深く広範な調査・研究に基づいて、団体の思想・活動に観察処分に値するような危険性があるか否かに関して、意見を同委員会に提出されました。

……(略)……

結論として、ひかりの輪は、オウム真理教の教義・活動の中で事件の原因となった危険な要素に対して十分な対処しており、その意味で危険な団体ではないとして、公安調査庁の見解を否定しました。また、2017年にも再び、同じ趣旨の意見を発表されています。

広報部のお知らせ. “宗教学者2名(鎌田東二氏・大田俊寛氏)の方がひかりの輪の健全性を認める報告:長年の広範な調査研究の結果”. ひかりの輪. 2018-04-18. http://www.joyu.jp/hikarinowa/news/00news/1348_1.html, (参照 2020-08-19).
続いて、ひかりの輪に関する意見書(2014年11月)、ひかりの輪に関する意見書追加版(2017年11月)、雑誌「宗教問題」の座談会(2017年10月)での発言メモ(2018年3月20日発表)へのリンクがある。

雑誌「宗教問題」の座談会(2017年10月)での発言メモには、前掲インタビュー記事「なぜ人間はオカルトにハマってしまうのか?」へのリンクもある。

大田氏は次の記述からもわかるように、彼自身はおそらくマルクス的唯物論者で、神秘主義に対しては上から目線である。
私自身は、「ひかりの輪」が主張するように、すべての人間のなかに「神聖な意識」が存在するとは思わないし(少なくとも私のなかには、そのような意識は存在しない)、また、現実においても理念においても、「万人・万物が繋がって一体である」とも考えない。

大田俊寛. “「ひかりの輪」の宗教的活動に関する私見”. ひかりの輪. 2014-11-17. https://goo.gl/yyhFU2, (参照 2020-08-21).
それでいながら、オウム真理教とその後継団体に大田氏は寄り添う。ブラヴァツキー夫人の思想を麻原氏の思想に合わせて捏造するほどの献身ぶりなのである。

マルクス的唯物論者がなぜグノーシス主義を研究しようと思ったのか、わたしには不可解である。マルクス的唯物論者には最も縁遠い研究分野といってよいからだ(マルクス的唯物論者のこの手の論文は読めたものではない)。オウム真理教研究者としての箔を付けるためだとしか思えない。

大田氏は同文書において、次のようなことも記述している。
日本社会では現在、オウム真理教は実は、ロシアや北朝鮮の傀儡として作られた教団であり、地下鉄サリン事件は、これらの国家が目論んだ「間接的侵略」であった、とする陰謀論がまことしやかに流布されている。しかしながら、オウム真理教の思想や世界観を鑑みれば、同教団がロシアや北朝鮮の傀儡として行動するということはまったく考えられず、また、こうした憶測の裏づけとなる証拠は何一つ存在していない。

大田俊寛. “「ひかりの輪」の宗教的活動に関する私見”. ひかりの輪. 2014-11-17. https://goo.gl/yyhFU2, (参照 2020-08-21).
オウム真理教事件がロシアや北朝鮮の傀儡とは無関係だと強弁する姿勢は、およそ客観的とはいえない。彼の専門外の事柄だからである。そして、北朝鮮のスパイがオウム真理教事件に関わっていたことが発覚した今、この強弁には疑わしさが漂う。

2020年3月12日付「日本経済新聞」電子版のニュース記事は、観察処分の取り消しを求めた「ひかりの輪」の敗訴が最高裁で確定したと報じている。
オウム真理教の後継団体「アレフ」から分派した「ひかりの輪」が、団体規制法に基づく観察処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林景一裁判長)は12日までに、ひかりの輪の上告を退ける決定をした。10日付。観察処分を取り消した一審判決を取り消し、請求を棄却した二審・東京高裁判決が確定した。(略)二審判決は「ひかりの輪はオウム真理教の修行体系の最も基礎的、本質的な部分を継承している」などと指摘。15年の処分更新の時点でも、松本智津夫元死刑囚(麻原彰晃、執行時63)がひかりの輪の活動に影響力を有していたとし、更新は適法だったと結論づけた。

“観察処分巡り「ひかりの輪」の敗訴確定 最高裁”. 「日本経済新聞」電子版. 2020-03-12. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56694320S0A310C2CE0000/, (参照 2020-08-19).

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